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2019年

11月

29日

AI vs. 弁理士?

先日、商標に関するお題20問中、最終的な判断が正解するか否かをAIと弁理士とで競うイベントがありました。まあ、イベントとしては面白いかもしれません。

 

ただ、誤解してほしくないのは、

 

(1)審査なりの判断は、不変ではなく、時代背景や市場の現状により判断が変わる

(2)今回の学習データには、残念ながらその部分のデータが欠落

(3)出場した弁理士もまた、そのような情報を反映させることなく判断しているということ

という特殊事情があったということ。あくまでも、AIの可能性を検討するにはいいお題でしょうが、AIが弁理士に追いついたとか、どっちが優れているとか、そういう判断するにはナンセンスな前提条件だったということです。

AIは、学習データの良し悪しがすべて。これがダメならそのデータに基づいて学習された学習済みエンジンもダメです。そして、良いと思われるデータを選別する段階で人の恣意が入り込みますから、公平な判断基準を有する学習済みエンジンを生成することはできません。

しかも、確率での出力ですから、特異点には使えない。従来業務においても、80%は普通の判断で問題のない案件。弁理士の優劣は残り20%の特殊案件に対する対応と言っても過言ではないでしょう。

とすると、AIを用いた判断などとうたうのは10年早いとも言えますよね。特殊な案件については、いまだに無力ですから。(理由?学習するデータが量も質も足りないから。それだけです。)

 

2019年

9月

03日

商売はまっとうな者が強い!

大学の名称改変問題で、どうも商標が絡んでいるようです。

事件の内容は係争になるので言及はしません。ただ、学ぶべきことがあるので書いておきます。

まず、商標は先願主義、先に出願した者に権利が付与されます。もちろん、商標権を取らなくても商売として立派にされてきているお店も多いです。そういうお店と同じ、あるいは似ている名前を後から商標登録出願する行為についてです。

もちろん、そのお店の名前がある程度の周知性を有していれば問題は生じないとも言えます。しかし、そうでないケースの方が多い。この場合、先願主義では出願した方、すなわち後からその名前を使用しているお店の方に権利が、という形になります。

弁理士が後からのお店側につくと、すぐ「権利取りましょ。名前の使用の差し止めしましょ。」となります。法的には問題はないんですが、心情的にどうなんでしょう。

 

間違いなくもめることは必然。最悪、訴訟になります。そうなると、一番儲かるのは後から権利取ったお店?いえいえ、代理人である弁理士なり弁護士です。訴訟って、勝っても負けてもお金が飛ぶし、まず相手との人間関係は完全に断たれます。

 

ですから、何のために権利を取るのか、あるいは商取引としてどのような状態にしたいのか。まずは、これを明確にして対処しないと、専門家任せにすればするほどお金が飛んでいきます。

 

私は、商標の世界においても、まっとうに商売をされてきた方が強い、そういう世界にしていきたいと願っています。

 

 

2019年

9月

01日

わかりやすい雑誌のご紹介

美容サロンの経営者向けの雑誌で「PLAN」という雑誌があります。もちろん、美容サロンに特化した内容ではあるのですが、経営の本としては実に役立つ内容が多い雑誌の1つです。

その「PLAN」に知的財産の連載を監修させていただいており、その3回目となる今月号で、事例をベースに商標をわかりやすく解説しています。イラストもあり、事例も個人で店舗を経営なさる方には身近でありえる事例となっています。ぜひ、機会がございましたらご一読ください。

2019年

8月

23日

弁理士に任せれば安心なのか?

商標のことで相談、となると、やはり相談相手は弁理士になります。もちろん、日本弁理士会の建前は、一定レベルの質を担保している、ということになっていますが、本当にそうでしょうか?

 

まず、純粋な技術屋さんが弁理士になっている場合、実は、商標についてはほとんど知らない、と言うケースに直面します。もちろん、難しい国家試験に合格していますから、権利を取る、と言うことに関しては一定レベルかもしれません。やたら難しい言葉を使いたがる傾向も強いでしょうか(笑)。

 

しかし、商標で本当に大切なのは、どう使いたいのか、それならどういう考え方で権利を取ればいいのか、ここです。これが明確でない権利は、どこかで破たんしています。

 

よく、「この名前を登録したのは私なんです」と著名になった商品名を口にする先生もいらっしゃいます。しかし、その名前が著名になったことと、その先生が登録の代理人だったこととは、ほとんどのケースでリンクしていません。それはお客さんがブランディングにコストをかけた成果にすぎないからです。

 

ですから、まずはあなたの話を真摯に聞いてくれるか、そして、状況に応じて対応策の引き出しがいろいろあるか。これを判断しながら代理人を選ぶようにするべき分野の1つです。

 

そして、何よりもあなたが理解できる言葉で話してくれること。宇宙人と宇宙語で話したくはないですよね?決して「誰でも同じ」ではないことだけは覚えておいてください!

2019年

8月

22日

これ失敗というのか・・・

これは数年前の話です。ある交流会に出たところ、まあはしゃぎまくっているおばさまがいらっしゃいました。

 

漏れ聞こえてくる話を総合すると、先日、生まれて初めて本を出版されたらしい。そして、その本の題号を商標登録したから、この名前は私の独占なの、というのが大筋でした。

 

さて、ここで問題です。本の題号って、商標登録するべきものでしょうか?(ここでは単行本に限定します。)

 

 

回答としては、「NO」です。というか、登録したところで、第三者は似たような題号の本を遠慮なく出版することができます。

 

えっ、商標権あるんですよ。独占権じゃないんですか、って?

 

商標権自体は百歩譲ってそうなんですが、問題はその商標の使い方なんです。書籍の題号って、その本を他の本と識別するためのもの・・・・違いますよね(笑)。その本の内容を示すものです。

 

つまり、本の題号として、極論として同じ題号をつけたところで、商標として使用していませんから権利は及ばない、という結論になります。つまり、権利は取れるけれども取っても使えない無駄な権利、というのが正解。

 

本人は、もう有頂天になって騒ぎまくっていますからその場は放置したのですが、いざと言うときに泣くことになるんでしょうね。

 

もちろん、書籍の題号でも、他の商品に付与するなら意味ある場合もあるかもしれませんけどね。(「国家の品格」まんじゅう、とか・・・売れないでしょうけどww)

 

こういう使えない権利を取るなんてこと、普通の代理人なら勧めません。素人か、意図的に金もうけだけしようとしたのか。いずれにせよ、これも失敗例の1つであることだけは確かです。